熱きテレマーケター | デカくて悪いか!!                 --- Let's Go Feisty!      

熱きテレマーケター

朝、だらだらごろごろしていたいとき。
昼、ゆっくり便所にこもっていたいとき。
夜、暴れ狂う娘たちと戦いながら晩飯の準備をしているくそ忙しいとき。

そういう誰にも邪魔をされたくないモーメントにやつらは攻めて来る。
リンリンと…

「ハロー」
電話まであわてて走って答えるわたし。
「こちらOXリゾートでーす。2泊3日バンクーバーの旅が当たったよ!」
「XOクレジットですけど入会費ただのクレジットカードあげちゃうわ」

やつらは、テレマーケター。
この世で一番嫌われている職業。(我が家調べ)

わたしは、やつらが話し始めてから3秒以内に
「ノーサンキュー」
といってがちゃんと電話を切るのを常にしている。
「2泊3日バンクーバーの旅!」なんていうのだって話をきいてみりゃ、そいつは「2泊3日うちのセールストークを聞きに来てうちのリゾート買ってよ」の押し売り旅行をすすめているだけのこと。応募なんかしてもないのにかたっぱしから電話帳をめくってはうそくさい「大当たり!」をくりかえしているだけのこと。

そんなもんにひっかかってたまるか!
アメリカ生活8年。わたしは、これまで何千人ものテレマーケターを容赦なく「3秒斬り」してきている。

しかし、つい先日「3秒斬り」に挑む奴が現れたのだ!

リンリン。

やつからの電話は日曜日の昼下がり、「TVでフットボールをみながらビールを飲む」といった「アメリカ親父の至極のひととき」を堪能していた最中にかかってきた。

「ハロー」

「#%デパートのギフト券200ドル当たりました!」

やつは、うれしそうにそういった。しかし、わたしは、そんなセリフにゃなびきやしない。そんな下心ありありのだまし文句にひっかかるような女じゃねえんだぞ!わたしは、びしっと
「そんなもんいらねえ」
とはき捨て、3秒で電話を切った。

「まったくいいとこなのに邪魔しやがって」
ぶつくさいいながらTVの前に戻りビールをたしなむわたくし。するとまたすぐ電話がなった。

「ハロー」

「なんで電話を切った?」

「はあ?」

「200ドルギフト券やるっていってるのになんだその態度は!」

「へえ?」

「もっとマナーをもって電話にでるべきだろう」

信じられない展開。さっきのテレマーケターがまた電話をかけてきて説教を始めたのだ。

「200ドルもらえるんだからありがたくもらえばいいじゃないか」

こっちが状況がのめずひるんでいる間にやつは説教親父になって語りをいれつづける。

「おい、ちょっとまてよ」

売られたけんかを買ってやろうじゃないのモードに身をひきしめ挑むわたし。

「日曜日の昼間に無断で見も知らぬ人の家に電話をしてくるおまえのマナーこそなんなんだ!わたしには、拒否する権利がある!ギフト券なんかいらねーっていってんだろ!おまえのせいでフットボールに集中できないだろ!2度と電話すんな!」

と、ご丁寧に通常の20倍も会話をしてやって電話を切ったわたくし。

テレマーケターが反撃してくるなんて!
このわたくしに説教してくるなんて!

フットボールどころではなく動揺してしまうわたくし。
じわじわと怒りがこみあげてくる。
そして同時にあの男はなにものなのか…と、もこもこ想像力が活動を始めた。

「英語はなまってたぞ。ガイジンか?」
「電話切られて逆キレしてたらテレマーケターなんてやってやれねえだろうに。新米か?」
「今時ガイジンに仕事なんてないもんな、失業していてやっとみつけた仕事だったのかもな。」
「今日が初仕事で「お父さんがんばってね」「ああ、世界一のテレマーケターになるぞ!」なんて家族にいって元気に出勤してきたのかもな。」
「テレマーケターって仕事に誇りをもっているのかもな。」

ちきしょー。
ちょっと反省しちゃったじゃねえか。

ビールを飲み干してもフットボールどころではなくテレマーケター野郎が気になってしまったわたくし。

「また電話してくるかな?」
「そしたらちょっとあやまってやるか。」
「つらい仕事だけどがんばれよ!っていってやるか。」
「けど、日曜に電話すんなよっていってやろう。」
「これからは3秒斬りは、控えめにしてやるか。」

ちょっと大人になった日曜の昼下がりでありました。

以後、やつからの電話はない。
今頃やつもテレマーケター業界でもまれ、3秒斬りをなんとも思わぬいっぱしのテレマーケターになりさがっただろうか?テレマーケターも人の子なり。…だけど、やっぱりテレマーケターは大嫌いだ!