ターキー訪ねて850マイル… | デカくて悪いか!!                 --- Let's Go Feisty!      

ターキー訪ねて850マイル…

"I am all done!!!"
「おいらは、もうおしまいにしたいんだ!」

2歳のサル娘がカーシートのベルトをはずそうと大暴れしながら絶叫する。
「あとちょっとだから」
親は5時間前からガキをだましつづけ車は時速80マイルでぶっとんでいく。野を越え山を越え。はるか南のサンフランシスコへー。

「今年のターキーはサンフランシスコでいただきます」

そう、ばばあが宣言したもんだからわたしら家族は遠路はるばるシアトルからばばあのサンクスギヴィング(収穫祭)のターキーをいただきに大移動をしていた。飛行機で行けば、ほんの2時間なのに飛行機代がバカ高く(@260ドル×4)「ばばあのターキーにそんな金かけてたまるか」とわたしら家族は「14時間がまん大会」に挑んだのであった。(うちから、ばばあの家まで850マイルもあるんだよおおお)

朝4時半、ガキはベットからこっそり車にぶちこまれ、夢をみつづけたままおとなしく旅は始まったが、朝日がさしこむポートランドあたりからは
「おいらをどこにつれていくー!おいらはおうちでバーニーが見たいんだー!」
とガキは大泣きをはじめた。

「おらM&Mやるからだまれ」
「ドリトスもいかが?」

愛娘の栄養バランスにはうるさいお母さまのわたくしも黙っていてくれるならなんでもします!と
娘の好物のジャンクフードを与えまくる。

「おろせー。」
「おしっこーもれちゃうぞー」
「うんちもたれちゃうぞー」

トイレットトレーニング中の2歳児は、これさえいえば親はあわてて便所につれてってくれるだろうと知恵をひねり下ネタ攻撃にでた。しかし、そんなもん今日のお母様には通用しない。


「寝てる間におまえにはおむつをはかしておいたのさ。さー、おむつにやっておしましい!」

ちきしょー。いつもはご法度のたれながしを今日は全面許可されたがちっともうれしくありゃしない。サル娘は
「いやだー便器をまたぎたいんだー」
と泣きじゃくる。

「どうしましょう。とまりましょうか?」
目がぎんぎんに冴えるドラッグを飲んでハンドルを握るおやじがすぐひとりいい人になりたがる。
「ばかやろう、そんなことしてたら今日のうちにつかねえぞ。便所ストップはガソリンが切れるときだけさ。いけー!とばせー」
「はい」
おやじは、ひたすらハイウエイをぶっとばす。お母さんの膀胱だってぱんぱんだ。おむつにたれながせるなんて幸せなことではないか。
「もらせー。とっとともらすんだー!」
母は娘にゲキをとばす。

窓の外では、のんきに馬や牛がごろごろしている。カーシートで身動きのできない娘は放尿だか脱糞だがしながら
「おんまのおやこは、なかよしこよしー」
と悲しそうに口ずさむ。


地獄であった。
2歳と7歳の子供との14時間の監禁旅行。
唯一許される食事はプレイグラウンドつきのマクドナルド。ここでだけ、子供たちはしばし自由の身となり走りまわる。親は、油ぎったジャンクフードに気持ち悪くなりながらも次はいつ食事にありつけるかわからぬとビッグマックとフレンチフライとアップルパイにくらいつく。

そして10分後、
「ピー!集合!」
のお母様のふく笛の音とともに、ガキはカーシートに連れ戻されガチャンとシートベルトがロックされ再び監禁モードとなるのであった。

「ギャアアアア!」
「I'm all done!!!!!」

のくりかえし。
泣き、身もだえ、叫ぶお子様。しかし、親はシカトをきめて先を急ぐ。そして、権力に歯向かう気力をなくしたガキは泣き疲れ眠りにつく。

「よーし、いまだ!いまのうちにガンガンいこー」
「はい!」

スピード違反しまくりでぶっちぎろーと気合がはいったところで「きゅるきゅるきゅる…」うー、ひー、わたくしの下半身が暴動をおこそうとしていた。

「…便所、便所とまって!」
「ええ、せっかっくサルが寝たのに?ガソリン満タンですよ!」
「うるせー。さもないとここで出すぞー」
「や、やめてくださーい」

車は、もよりのガソリンスタンドに緊急停車し、お母様は便所に猛ダッシュ。下半身の暴動はしっかり便器が受け止めてくれ、最悪の事態はのがれたが(想像するのもこわーい)ああ、すっきりして車に戻るとサルが目を覚まして暴れている。

「ちょっと野放しにしてあげないと」
「しかたねえなあ」

そんなこんなを朝から晩までくりかえし、2歳児も、7歳児も、38歳児も己の限界まで車内監禁の刑に服しわざわざきてやったサンフランシスコ。

ターキー

ばばあのターキーは、まずかった。
そして、72時間後には、また来た道を戻っていったわたしたち。ああ、なんのためにあるサンクスギヴィング。ターキーなんて自分ちで食わせておくれよ!二度と車でなんか行きたくないが、もし行くなら、今度はわたしもおむつをはいていこう…そう決心した今年のサンクスギヴィングでありました。